【前編】これからのアーティストとクラウドファンディング
2015/09/10
by Takashi Watanabe
ここ数年で、以前よりずっと身近な言葉になりつつある『クラウドファンディング』。
アーティストの皆さんの中でも『興味はあるんだけどなぁ...』『やってみたいとは思っているんだけどなぁ...』という方も、多いのではないでしょうか?
これから音楽活動を行っていくアーティストの皆さんにとって、ますます当たり前の選択肢となるであろうクラウドファンディング。実際にアーティストの皆さんがプロジェクトをスタートさせようとする際、必要な準備や計画は何なのか。
今回TuneCore Japanでは、クラウドファンディングサービス『Makuake』を運営する株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング中山亮太郎社長に、アーティスト・音楽とクラウドファンディングを巡る関係について、インタビューさせて頂きました。
Makuake
株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディングが運営するクラウドファンディングサービス。会員が3000万人を超えるAmeba事業との連携含め、サイバーエージェントグループのメディア力・告知力を生かした取り組みが特徴。
音楽プロジェクトは、参加する側のワクワク感が突出している
ーー2013年に『Makuake』がサービスインして、約2年。この2年間で、アーティストや音楽業界全体のクラウドファンディングへの意識、向き合う姿勢の変化を感じますでしょうか?
<サイバーエージェント・クラウドファンディング 中山社長>
はい。最初はアーティストの方がチャリティ活動をするためにクラウドファンディングを活用する事例が多かったのですが、最近はクリエイティブ、制作物に関わるプロジェクトが増えてきました。
単純にプロジェクトを行うだけではなくて、そのプロジェクトに参加してくれるファンに目を向けて、ファンが心躍らせる、楽しんでくれる方法を取ろうという意識が、プロジェクトを行う皆さんに浸透し始めている気がします。
ーーファンが心躍らせる方法、ですか。
たとえば新しい音楽イベントを開催することだったり、少し変わったミュージックビデオをつくってみることだったり。アーティストとしての『新しい表現』を追求しつつ、ファンの人たちが心躍らせるような、そんな企画ですね。
もちろん『お金を集める』ことも目的の1つではあるのですが、その過程で『ファンといっしょにつくりあげていく』を楽しむ。『お祭りをつくりあげていくノリ』に近い考え方へ、アーティストも音楽業界の方もシフトしているように感じます。
ーー他ジャンルのプロジェクトに比べて、音楽ジャンルならでは、特徴はあったりしますか?
そうですね。たとえばプロダクトメーカーさんが利用する場合には、(作ろうと思っている)プロダクトのテストマーケティングや、リリース前のプロモーションという意味合いが強くなるのですが、音楽ジャンルはやはり『Co-Creation』(共創)』という側面が強いなと感じます。
音楽・アーティストの特性を考えると、『この企画、実際にみんなどう思う?』という問い(テストマーケティング)よりは、『こんなに面白いお祭りがあるから、一緒に楽しもう』という訴求(共創)を求めているファンが多いのかと。
ーーどうして音楽は『Co-Creation』(共創)が強く出るのでしょうか?
やはり音楽は(プロジェクトに)参加する側のワクワク感が、突出しているからですね。愛の深いファンがいるというか。
もちろん、映像クリエイターやイラストレーターにもファンがいる方はいらっしゃいますけど、いわゆるタレント性・スター性を兼ね備えた存在がまだ少なくて。
アーティストはタレント性・スター性のある方が本当に多く、ファンとの関係を構築しやすい。『このアーティストが好き!』という熱を注ぐファンがたくさん居るので『ファンと共に何かをつくりあげる』ことに適しているのだと思います。
ーー今まで『ファンと共につくる』ことや、コンテンツの制作過程をあまり公開してこなかったジャンルだからこそ、そこにファンのニーズが生まれているとも言えますでしょうか?
僕は音楽業界の人間ではないので、偉そうなことは言えないですが…(笑)きっと、それもあると思います。インターネットの使われ方が、二極化している印象は受けます。
距離が遠いからこそ価値が高まる、表現者であるとき以外の姿を絶対外に見せないアーティスト。その一方で、よりファンに近く、ファンからも手が届く範囲で、いっしょに何かをつくりあげるスタイルをもったアーティスト。
外から見ていると、クラウドファンディングに限らず、後者のスタンスをもつアーティストが増えているなという印象があります。
ーーなるほど。その中で、クラウドファンディングで成功するアーティストに何か共通点を感じますか?
アーティストが本気でコミットするかに尽きると思います。難しい点ではありますが、パブリックイメージをコントロールする理由で、(クラウドファンディングを)していることを外部に言わない方もいらっしゃるんですね。
スタンス次第ではあると思うのですが『今こういうプロジェクトを成し遂げようと思ってます。だからぜひ応援してください。』と、素直に自分のメディアで発信しているアーティストがやはりプロジェクトも成功しやすいです。
そして何より、自身がコミットすることで、参加してくれるファンにモチベーションをつくっているなと感じます。
ーーアーティストのプロジェクトに対するコミット具合が、結果にも深く関わってくる。
はい。そこをコミットしないのであれば、クラウドファンディングは相性が良くない。やらない方が良いのではないかと思います。
モチベーション設計は『資金が足りないのでお願いします』ではない
ーー今まで成功してきたアーティストで、ユニークな事例を伺いたいです。
『天才凡人』というアーティストがいらっしゃって、彼らが非常に面白かったですね。彼らは知名度的にこれから大きく成長していく段階なのですが、キッチリと今いる自分たちのファンを掴んで、全国津々浦々でPVを撮影するという企画をやっていました。
ーー(映像を観て)おもしろい!そして弊社の利用者です...(笑)
そうなんですね!プロジェクトが盛り上がった理由は、やっぱり彼ら『天才凡人』自身が積極的にこのプロジェクトを宣伝していたことでしたね。
彼らはモチベーション設計が『資金が足りないのでお願いします』ではなく、完全に『こういう面白い企画をいっしょにやろうよ』だったというか。
ーーアーティストと参加するファンのコミュニティという点では、広く浅く大衆に知られているアーティストよりは、天才凡人さんのように、狭く深く愛情が育まれているコミュニティが適しているのでしょうか?
狭く、深く、熱くですね。ですのでアーティストの方でも、認知度はすごくあるけれど、そこまでコアファンが多くないアーティストの方は結構苦戦をしたり。
逆に言えば、インディーズアーティストでまだ知名度はなくても、企画の面白さやファンとの良質なコミュニティが出来ている方は、非常に可能性を秘めているとも言えます。
そちらの方が、(プロジェクトを)やりやすいとも思うんですよね、メジャーアーティストの方にも勿論『Makuake』を利用して頂きたいのですが、意思決定するにあたってクリアしなければならない障害が多いのも事実で。
ーーなるほど。
特にインディーズの中でトップアーティスト、メジャーで活動を行っていくポテンシャルも十分に持ちつつ、あえてその立場をとっているアーティストの方は、最も相性が良いのではと。
あまり制限に縛られず、大胆な取り組みがしやすいですよね。『インディーズ = より自由な表現を求めている人たち』であると僕は思っていますので、その自由な表現を行う場として、クラウドファンディングをぜひ活用頂きたいです。
続きは、明日公開です!
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