“音楽活動の資本は、あくまでもアーティスト。”『感覚ピエロ』秋月琢登【後編】

2016/05/27

 

 
 
音楽活動の資本は、あくまでもアーティスト。

 

現在、大注目アーティスト『感覚ピエロ』のギタリストであり、自主レーベル『JIJI RECORDS』代表を務める、秋月琢登さんへのインタビュー。

前編では、人気ドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ)の主題歌を、彼らが歌うことになるまでのストーリーを伺いました。続く後編では、『感覚ピエロ』が、すべての音楽活動をセルフプロデュースでやり続ける想いを聞いていきます。


<前編をお見逃しの方はコチラ>

 
 
飛ぶまでの、最短ルートを。

 
ーー『感覚ピエロ』の活動を見ていると、すごく確信犯的に、自分たちをプロデュースしているなぁと感じます。それこそ『O・P・P・A・I』のような方向に振り切れるときもあれば、今回のタイアップのような場所もあって。
 
秋月:元々、そういう気質はあるんですよね。『感覚ピエロ』の成り立ちも実は、僕がライブハウスのブッキングマネージャーをやっていたときに、面白かったプレイヤーたちを集めて結成してますし。
 
ーー秋月さんがブッキングマネージャーを?
 
秋月:はい。関西のライブハウスで、ブッキングマネージャーを4年程度やっていて。ライブハウスって、当たり前ですけど1日に5〜6組アーティストがライブをやっていて、それを年間365日観ることになるんですね。4年間続けたら、2,000組近くのアーティストを見ることになって。
 
<秋月琢登さん(感覚ピエロ)>
 
そうやって観続けていく内に、バンド活動における「バランス」の難しさが分かる。たとえば、ギターやドラムだけがものすごくうまいバンドがいたり、ボーカルが変わるだけですごくよくなるのにって思うバンドがいたり。要はメンバー同士の「組み合わせ」だなぁと思ったんです。(感覚ピエロの)ボーカルの横山なんかはまさにそれで、ライブを観ていて、このボーカルいいなぁと思っていた奴なんです。
 
ーー横山さんとは、ブッキングマネージャーと出演者という形で出会われたんですね。
 
秋月:そうだったんです。それでそんな時期を過ごす中で、僕が個人的に良いなぁと思っていたメンバーのいるバンドがぜんぶ同じタイミングで解散しそうになったときがあって。そのタイミングで、あらためて横山に声をかけて、僕が自分の前身バンドからドラム(西尾)と、他のバンドからベース(滝口)を連れてきて結成したのが、『感覚ピエロ』なんですね。だから最初から、チーム編成も含めて、自分たちで狙って組んでいるというのがあるんです。
 
ーーはあぁ… なるほど。
 
秋月:そのときの経験は、今もかなり生きてますね。ブッキングマネージャーって、アーティストのかなり深い部分まで、入り込むんです。楽屋から、ステージから、精算から、全ての工程に立ち会う。するとその中で、飛び抜けていくバンドもあれば、途中で勢いをなくしてしまうバンドも見えてくる。そういう光景に何度も出会っている内に、客観的に見て、バンドが飛ぶまでの「最短ルート」は、導き出せるんじゃないかと思って。
 
バンドマンってどうしても、固定概念に捉われがちなところがあると思うんです。とにもかくにも、自分たちの信じた音楽をやっていければ、それでいいみたいな部分があって(笑)。もちろん、それはそれですごく大事な姿勢なんですけど、その固定概念から一度離れて、今自分たちに何ができて、今何が足りていないかを的確に把握して、まずは世間に評価してもらうステージに立たなくちゃ、と思うんですね。
 
ーーまずはステージに立ってからが、スタートだと。
 
秋月:はい。僕たちが『感覚ピエロ』を結成して最初にやったのも、バンドとしてPVをつくることだったんですね。2013年の7月に『メリーさん』のPVを撮って。デモ音源をどこかにアップしたり、CD-Rに焼いて配ったりするんじゃなくて、最初からPVで行ってみたんです。
 
<メリーさん>
 
これは僕の考えですけど、たとえばカフェを出すとして、外装にしっかりお金をかけて最初からお洒落な店舗を構えたカフェと、味には自信があるから外装は後まわしだって判断でひとまず店舗を構えたカフェがあったとしたら、みんなどっちに入るんだろうっていう。ほとんどの人が、前者ですよね。
 
ーーたしかにそうですね。それに、たとえ味が美味しいんだとしても…
 
秋月:後者のカフェには、足を運びづらいだろうなぁと。結局、足を運ばずに終わってしまうことも多いと思うし。そういう考えを音楽活動に置き換えてみると、僕たちも「できるだけ高い位置」から自己紹介する方法を考える必要があって。それは、SoundCloudにデモ音源をあげることでもなく、CD-Rを配ることでもなく、音と映像で合わせて勝負する「PV」だったんですよね。
 
 
プレイヤーが、やりたいことを具現化する。

 
ーーなるほど… すると『メリーさん』の公開が2013年8月だから、そこからすぐに『O・P・P・A・I』を(同年12月にPV公開)。
 
秋月:そういうスピード感と、表現の振り幅を出したかったんです。もちろん、1曲目はすごく大事ですけど、その次の手となる2曲目も、それ以上に大事で。僕たちが最初に『メリーさん』のようなアプローチをとったのは、「僕たち、ロックバンドです。どうぞ宜しくお願いします」っていう、あくまでも分かりやすい名刺をつくったというか。
 
でも、この後にまた同じアプローチでいくと、それはただ単に「ロックバンド」どまりになっちゃうと思うんですね。もっとバンドとしての振り幅を見せる、おもいっきり1作品目と違うところにボールを落とすってことをやってみたくて。
 
点と点を思いっきり離して、大きな円をつくるというか。そういう考えがあって、ああいう歌詞の、ああいうタッチの、ああいうコメディのような『O・P・P・A・I』をつくりましたね。
 
<O・P・P・A・I>
 
ーー『O・P・P・A・I』で、大きな円を(笑)。
 
秋月:あはは(笑)。いや、(バンドとして)僕らもクールっちゃクールなんですよ。『メリーさん』のときなんて、全員めちゃくちゃ格好つけてますからね。格好つけているのに、メンバー全員、はじめてのPV撮影でしたけど(笑)。
 
でも、そういうガチガチに決めた作品をつくった後に、バンドとしてめちゃくちゃアホな感じや、バカっぽいところや、個性の強い感じっていうキャラクターを伝えることができたかなと。
 
ーー実際に、活動の初期からそういう狙いをもって、ストレートな作風の1作目(メリーさん)と、コミカルに振り切った2作目(O・P・P・A・I)を公開してみて、どうでした?
 
秋月:やっぱり、バンド自体を認知してもらうことには、すごく役立ったなと思います。面白いのが、一気に「コミックバンド」って呼ばれるようになって(笑)。
 
ーーまだ、2作しか出していないのに(笑)。
 
秋月:そうです、そうです(笑)。『メリーさん』がゴリゴリのギターロックで、『O・P・P・A・I』がああいう作風で。その2作品を出したら、もう「コミックバンド」と呼びはじめる人がいる。しかも「感覚ピエロは、こうじゃない」とかって言い出してる人もいる(笑)。たった2曲でこれだけの振り幅を感じてもらえるんだったら、3曲目でやれる表現というのは、ますます広がるだろうなぁと。
 
それは今だってそうで、お客さんの反応を見ていると、すごく面白いんですよ。たまたまドラマの主題歌になった『拝啓、いつかの君へ』という曲があって、あの曲を入り口に、僕たちに興味を持ってくれたひと、ファンになってくれた人も多くいる。
 
<拝啓、いつかの君へ>
 
それでその人たちが『感覚ピエロ』って調べてみると、いきなり『O・P・P・A・I』のような作品が出てくる(笑)。「こんなコミックバンドがドラマの主題歌歌ってるの!?」って思われるかもしれないけれど、この振り幅を感じることで、僕たちをもっと面白がってくれているような気がするんです。
 
ーー秋月さんのお話を聞いて感じたのですが、『感覚ピエロ』は、自分たちの楽曲と聴き手との間に、コミュニケーションの『厚み』をつくるのが、すごくうまいですよね。
 
秋月:そうだといいんですけどね。でも、たとえば『O・P・P・A・I』みたいな楽曲をSoundCloudにアップしただけだったら、ある程度の再生回数まではいくとは思うんですけど、今こういう役割を果たしてくれる楽曲になっていないと思っていて。
 
それと逆の話で、たとえばアルバム収録曲としてリリースされていた楽曲だったとしても、その曲をしばらく経ってからあらためて映像化したり、なにかプロモーショナルな要素を持たせたりしたら、きっとお客さんは(その曲を)いいな、って感じてくれると思うんですね。その曲のライブでの立ち位置も変わるだろうし。だから、曲がもつ文脈や力っていうのは、工夫次第でいくらでも高められると思います。
 
ーーう〜ん…もうほんと、レコード会社やマネジメント会社が考えて実行していくようなプロセスを、全部自分たちでされてますよね。
 
秋月:(笑)。やっぱり、さっきも少し話しましたけど、プレイヤーである自分たちを中心に、やりたいことを具現化していくっていうのが、いちばんバンドの良さを周りに伝えやすいと思うんですよね。
 
たとえば僕たちのPVを撮ってくれている監督は、1作目からずっと一緒なんです。彼も僕たちと同世代の映像監督で、すごくクリエイティブに関する意思疎通もとりやすくて。そうやって、バンドメンバーも含めたコアなチームで、ひとつひとつをやっていけているのは、すごく大きいと思います。
 
<A-Han!!>
 
 
目と目を合わせて、音楽活動を。

 
ーーそのチームは、これからもっともっと、大きくなっていくんでしょうか?
 
秋月:そうですね… 「チーム」って捉え方とはまた違いますけど、今度とある古着ブランドさんともコラボレーション予定ですし、そういう機会は増えるかもしれないです。ただ、母体はあくまでも僕たちにあるまま、何かをやって行きたいですね。
 
今後は、マネジメントがもっと重要になっていくと思うんです。自分たちが地に足をつけた形で、360度回っていけるのが、いちばん強くなるはず。中心はあくまでも僕たちのまま、業務提携というかたちで外部の方とレーベル事業をやっていったり、共同出資という形で新しい会社を立ち上げたり、そういう方法もあるんじゃないかと思ってます。
 
ーーすでに行なわれている外部の方との取り組みでいくと、TSUTAYA 限定版(レンタル限定版)をリリースされてましたよね?
 
秋月:出しました。実はあれは、僕たちからTSUTAYAさんに企画を提案させて頂いたんですね。全国に販売網があって、僕たちの音楽が一番届く方法って何かって考えると、やっぱりTSUTAYAさんの存在が大きくて。でもそこで、単純にCDを置く置かないって話ではなく、何か仕掛けとしてユニークなことが出来ないかなと思って。
 
そこで、もうすでに流通している作品をレンタルに出すんじゃなくて、まだ「未流通」の作品をレンタルで最初に出してみるっていうのは、面白いんじゃないかなと思ったんです。そのアイディアをTSUTAYAさんとお話させてもらっていく内に、いっそ未流通作品を「3タイトル同時レンタル解禁」にしちゃったら、もっと面白いんじゃないかと(笑)。
 
<TSUTAYAレンタル企画1枚目『ソンナノナイヨ』>
 
そういう流れがあって、2014年と今年に、TSUTAYA限定レンタル版を3タイトルずつ出したんです。だから僕たち、全国流通版のCDはまだ1タイトルで、ようやくこれから2枚目というところなんですけど、TSUTAYAさんにはすでに6タイトル並んでるっていう(笑)。
 
ーーそのセルフプロデュースは、すごいですよね。自分たちで販売網すら開拓されていて。
 
秋月:企画を受けてくれたTSUTAYAさんには感謝していますし、それに今って企業の方々も、アーティストの話にすごく耳を傾けてくれると思うんですね。それはスタンスの問題であって、アーティスト側が「なんとなくお願いをする」っていう姿勢じゃなくて、今までこういう取り組みがなかったから、僕たちはこういうことをしたいんですっていう「提案」さえできれば。
 
ーーアーティストが主体として、動いていければ。
 
秋月:もちろんアーティストが踏ん反り返って偉そうにしている、というのは全くダメですけど(笑)。でも、あくまで音楽活動の資本というか、イニシアチブをとっていくのは、アーティスト自身だと思うんです。
 
アーティストが音を作って、歌を歌って、ライブをやって、そこにお客さんが集まって。その火種を広げていくために、外部の人たちと手を取っていくのが、いちばん自然であり、本質なんじゃないかなと思います。
 
ーーアーティストを中心としながら、その火種をさらに広げるために、適材適所でパートナーシップを組んでいくということですね。
 
秋月:はい。だから僕たちも、今回のタイアップの件もそうですけど、自分たち自身も、そこに関わる人たちも、お互いが勝てるかたちで活動していきたいんですね。転ぶときはお互いが転びますし、登るときはいっしょに登るっていう関係性で。
 
バンドとしての活動範囲が大きくなるにつれて、どこかで最小人数のマネジメントに限界は来ると思いますので、そのときには「この人だ!」っていう人たちと、目と目を合わせて、音楽活動をしていきたいなと思います。
 
 
 
感覚ピエロ
 
2013年大阪にて結成。バンド結成直後、自主レーベル「JIJI RECORDS」を設立。バンド始動から約2年半、確信的に中毒性の高い楽曲と圧巻のライブパフォーマンス、驚異的な活動スピードを持ちながらも、これまですべての活動をメンバーのセルフプロデュースで活動し続けている。2016年6月1日、待望のセカンドミニアルバム「不可能可能化」をリリース。

 

 

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