圧倒的な何かはなくても、できること。元 Goose house リーダー『d-iZe』インタビュー。

2016/03/02

 
元 Goose house リーダーの、新生活。

 
今回のSpotlightは、YouTube で話題の音楽グループ『Goose house』の元リーダー、シンガーソングライターの『d-iZe』さんへ、インタビューさせて頂きました。
 
グループとして人気急上昇中の2014年に『Goose house』を卒業し、ソロとして新たな道を歩み始めた『d-iZe』さん。2月24日には、自身初となる全国流通盤『IN A BEDROOM』をリリースしました。
 
 
これからの活躍がますます期待される最中でのインタビューでしたが、そのお話は多岐に渡り、出てきたトピックスは、自身の考える音楽をとおした『エンターテイメント』についてや、アジアでのライブ活動について、そして『すっぴん風メイク』についてまで?
 
多くの人にとって新生活が始まる春にぴったりの、あらたな道を歩み始めたアーティストへのインタビュー。お楽しみください。
 
 
アルバムタイトルにひそむ、本音。

 
ーーニュー・アルバム『IN A BEDROOM』、聴かせて頂きました。Goose house 時代から一貫した、d-iZeさんの『優しさ』がベースになっていながら、そこにあたらしい『強さ』を感じる作品だなあ、と感じました。
 
d-iZe:ありがとうございます!うれしいです。
 
ーーたとえば『フィクション』のように、メロディ・アレンジがすごくポップで柔らかくて、歌詞も一聴するとそれに寄り添った内容に思えるんだけど、よく耳を澄ますと、もっと内省的なこと、d-iZeさんの思考の核の部分を歌っているような気がして。
 
d-iZe:たしかに、そうですね。(Goose house 時代を含めて)今までつくってきた楽曲や作品に比べても、その『内側』を映した色合いが、強く出ていると思います。
 
 
d-iZe:今回アルバムのタイトルになった『IN A BEDROOM』という言葉が、ひとつのキーワードになっていて、最初から『外』を向いた感じの作品では、ないんですね。まずはすごく内側を向いて、自分と向き合いながら、生まれた作品というか。
 
ーーそれがとても、新鮮でした。d-iZeさんのこれまでの活動を拝見すると、自分の近くにいるファンのみなさんを喜ばせたいというか、そういったみなさんに寄り添う音楽づくりをする、というイメージがあって。
 
d-iZe:はい。実際に、そういう気持ちは、すごく強いです。特にこれまでは、自分たちが楽しみながら、ファンの皆さんといっしょに楽しむこと、そこに何より一生懸命に取り組むグループ(Goose house)として活動してきて。
 
 
d-iZe:そして今、そのグループから離れて、『自分は果たしてなにが出来るんだろう』ということを模索しながら、去年1年間(2015年から音楽活動を再開)やってきて。
 
d-iZe:今回、ほぼ全曲書き下ろしの新曲、というかたちでアルバムをリリースすることになったのですが、その作品の中に、今自分が感じていることや、思っていることを反映させたいな、という想いが強くあったんです。
 
 
実はちょっと、毒の量が多めなんですよね。

 

ーーなるほど… いや、もう『スーパースター不要論』とか、衝撃だったんです。『こういう歌を、d-iZeさんが歌っちゃっていいの!?』という感じで。

 
d-iZe:ふふっ、ヒヤっとするくらい、自虐的な内容だったりしますからね(笑)。
 
昨日の投稿 お気にの服
いいねが少なくてお蔵入り オンナノコ
自慢の角度 誰よりも知ってる
トイレを背景にキメ顔の オトコノコ
                  ——— スーパースター不要論
 
ーーほかの歌詞も、すごいです。『すっぴん晒してあげる好感度』とか『キャプションなしじゃ数字稼げない』とか。
 
d-iZe:(笑)
 
ーーこういう内容を、ヒップホップのアーティストが世の中を皮肉ってる、とかだったら分かるんですけど、その渦中にもいるd-iZeさんが、真正面から歌っているっていう構図が、すごく面白くて。
 
d-iZe:ありがとうございます。ぼくは、インターネットから出てきた歌い手というか、YouTube 出身のアーティスト、というふうに、皆さんから認識して頂いていると思うんです。
 
d-iZe:だから今回は、そういうものをあえて逆手にとって、自虐的に歌ってみる、というのはどうだろう?と思って作ったのが、この『スーパースター不要論』です。一聴するとポップですけど、実はちょっと、毒の量が多めなんですよね、今回のアルバム(笑)。
 
 
『圧倒的な何か』はなくても、できること。

 
ーー今作で、その毒の量を多めにした経緯というか、内省的な想いを楽曲に込めるようにした特別な理由が、あるのでしょうか?
 
d-iZe:そうですね… ぼく、自分自身が『アーティストではない』と、いつも思っていて。
 
ーーアーティストではない、ですか?
 
d-iZe:はい。どちらかというと、音楽も含めた『エンターテインメント』として、楽しんでもらえれば、という気持ちが強いんです。それは以前の活動から、一貫してあるもので。音楽だけではなくて、ツイッターでのやり取りとか、YouTube の動画とか、物販とか、ライブ後の握手会とか、そういうのを含めて、全部で楽しんでもらいたいなあと考えていて。
 
ーー以前から、その活動スタンスは、変わらないと。
 
d-iZe:はい。それで、そのスタンスってのが、どこから来てるのか突き詰めていくと… きっと、自分に対する自信の無さなんだと思います。
 
ーー自信のなさ、ですか?
 
d-iZe:自分自身へのコンプレックスから来てる、と思うんです。元々、ぼく自身がすごく好きなアーティストは、本当に歌唱力が素晴らしかったり、ソングライティングにおいて比類なき才能を持っていたり、そういった洗練された『圧倒的な何か』を持っていらっしゃる方で。
 
d-iZe:そういう憧れがある中、音楽活動をはじめてみると、その『圧倒的な何か』を自分は持っていないぞと気付いて、悩んだ時期があって。それはそれで、すごく辛かったのですが、活動を続けていく内に、良い意味での『あきらめ』が生まれたんです。
 
d-iZe:『圧倒的な何か』はないけれど、そうじゃない要素でも、みんなに楽しんでもらうことは出来るんじゃないか、と思い始めて。
 
 
ーー『圧倒的な何か』ではない要素や方法でも、みんなを楽しませられる。
 
d-iZe:はい。それがきっと、音楽も含めた『エンターテインメント』として、提供する体験をみんなに楽しんでもらう、というスタンスに繋がっていきましたし、今までの活動の根幹をつくってくれました。
 
ーーなるほど。
 
d-iZe:たとえば、ぼく、ライブの後に握手会をやるんですけど、その握手会がすごく好きなんです(笑)。たくさんのひとに『ありがとうございます』と直接伝えることが出来るし。普段は会えない、色んなひとに会えるし。
 
ーー音楽を媒介として、色んな人に会うことが楽しみ、ということですよね。
 
d-iZe:はい。そのうえで、今回の『IN A BEDROOM』では、そのエンターテイナー要素、ファンのみなさんが『欲しい』と思っていることを感じとってそれを演じる、をあえてシャットダウンして、そのあと自分になにが残るのかな?ということに、挑戦してみたんです。
 
 
ーーああ、なるほど。
 
d-iZe:それをシャットダウンしたときに、自分の中に(曲として)書きたいことってあるのかな?とか。『こういうこと言ってもらえると嬉しいよね』ではなくて、『ぼくはこれが言いたい』ということは、しっかり自分の中にあるのかな?と。それをすごく、自問自答して。その想いを、アルバムの中に反映させてみました。
 
d-iZe:その結果として、自分自身を自虐してみたり、優しいアプローチでちょっと冷めたことを言っていたり、Goose house 時代も含めて、今までのぼくのイメージだったであろう『爽やか』や『優しい』に対して、またジャンルの違う要素が混ざった作品になったと思います。
 
ーー今すごく、腑に落ちました。
 
d-iZe:あとは、どこかで窮屈さを感じていた部分が、あったんだと思います。その『爽やか』と『優しい』だけを演じている自分に対して。
 
d-iZe:なにもこれは、音楽だけに限ったことではなくて。普段生きている中で、みんなそれぞれ『求められている自分』というものをきちんと演じることによって、世の中が円滑に進んでいく、とは思うんですけど。でも、たまにそうじゃない、『それだけじゃあないんだよ』という自分が顔を覗かせるときもあって。
 
ーーすごく分かります。
 
d-iZe:ですよね。『それだけじゃあないんだよ』って思うじゃないですか。そういうことを考えたときに、その『それだけじゃあないんだよ』という自分を出せる場所は、きっとみんなそれぞれの『BEDROOM』なんだろうな、とも思ったんです。なので、『BEDROOM』というタイトルには、そういった意味も込められていますね。
 
 
 
それは、すっぴん『ふう』メイクのような。

 
ーーああ、たしかに。その『求められてる自分』と『それだけじゃあないんだよという自分』が、なんとかバランスを取り合おうとしているような楽曲が、今作は多い気がします。
 
d-iZe:まだまだ、難しいですけどね。この作品以外でもそこは、四苦八苦してます。
 
d-iZe:今、『こっちはこういうものを見せたいんだ!』とか『こっちはこういうものを知って欲しいんだ!』という価値の提供の仕方って、そんなにお客さんは望んでいないんじゃないかな、と思うんです。これも、音楽に限った話ではなくて。
 
d-iZe:お客さんは、自分自身でなんとなく見たいものを見るし、自分自身でなんとなく知りたいことを知ろうとする。基本的に『お客さんの方に選択肢がある』ということを認識していることが、すごく大切だと思っていて。
 
ーーお客さんの方に、選択肢がある。
 
d-iZe:はい。なので、もう、せめぎ合いですよね、そこは。そのお客さんの『なんとなく』の欲求をどこまで汲み取って、どこまでの範囲であれば、答えることが出来るのか。なんというか、『すっぴんふうメイク』のような(笑)。
 
ーーすっぴんふうメイク(笑)
 
d-iZe:すっぴん『ふう』メイクですよ。すっぴんを求められるから答えるけれど、そこにもメイクという手は加えていて(笑)。たとえばですけど、ぼくは映像編集が苦手だし、ピアノを弾くのも実は苦手なんです。だけど、お客さんの中には、YouTube でぼくがピアノを弾いて歌うのを見たい、と言ってくれる方がいる。
 
 
d-iZe:個人的な立場でいれば、苦手でやるのが嫌なこと、見せたくないことは、やらなければいいし、見せなければいいとも思うのですけれど、今、d-iZeというプロジェクトを進めていく中で、そこに関わってくれるひとたちも徐々に増えてきて。そうすると、個人的な感情よりも優先すべきことが、当然出てきますよね。
 
d-iZe:『見たい』と言ってくれるひとがいて、自分の内側にも、取り組む理由が見つかる。そうであれば、たとえ苦手なことであっても、取り組むに値するのかなって。そんなふうに、思ったりします。
 
 
福岡に出かけるように、アジアの国へ。

 
ーー最後に、今後の活動や、展望について伺わせてください。ジャカルタでライブを行う予定とのことですが、今後は海外でのライブも積極的に行っていくのでしょうか?
 
d-iZe:そうですね。ジャカルタでのライブは、現地のプロモーターの方に、いきなりTwitterで『ジャカルタでライブをしませんか?』とオファーをもらって(笑)。でも、どうでしょう…?自分の中で、日本以外のアジアにライブしに行くのって、それほど『海外』って感覚でもないんですよね。
 
ーーなんでしょう… 東京から、地方にライブに行くような感覚?
 
d-iZe:そうです、そうです(笑)。そんなに遠くないというか。アジアでのライブに関しては、特に台湾とインドネシアは、ずっと意識している場所で。Goose house 時代から、YouTube を通じて、ファンがすごく多くいるのも知っていましたし。
 
d-iZe:実際に以前、オフで台湾の台北に遊びに行ったことがあったのですが、現地を歩いてたら、3回くらい声をかけられたんです。『YouTube のひとですか?』とか『このひとでしょ?』って自分が出ている YouTube動画をスマホで見せられたり(笑)。やっぱり、すごく距離が近いなあ、と実感したんですよね。
 
ーーおもしろい。しかもそれは、『台湾やインドネシアに自分の音楽を届けよう!』という、特別なプロモーションをしていたわけではないんですよね。
 
d-iZe:そうなんです。やっぱりそういう意味でいうと、YouTube で J-POP カバーを発表する、というところから、ぼくのことを結果的に知ってくれた方々が多くて。台湾もインドネシアのひとも、すごく日本の音楽、『J-POP』が好きなんですよね。有難いですし、『YouTube すごい!』って、あらためて思いますよね。
 
d-iZe:だから『J-POP』という音楽フォーマットを生かして、海外で音楽活動をするということは、ぜひ挑戦していきたいです。台湾やインドネシアは、すでにもう『J-POP』を好きでいてくれる音楽ファンが多い場所。そういった場所には、本当に日本の地方、『福岡』に出かけるような感覚で、どんどん歌いに行きたい、と思っています。
 
 
ーー福岡に出かけるような感覚で(笑)
 
d-iZe:はい(笑)。そのうえで、今はとにかく、『IN A BEDROOM』のツアーが楽しみです。2月末から東京の代官山でスタートして、全国6都市で公演があります。今回のアルバムは、ほとんどが書き下ろしの新曲なので、新しい曲をライブで歌ったらどんなことになるんだろう、お客さんがどういう反応をしてくれるんだろうか、ということのが、とても楽しみです。
 
 
d-iZe:Youtubeで話題のユニット『Goose house』のリーダーを務め、2014年に卒業。2015年からソロとして音楽活動を再開させ、シンガーソングライターとしての新境地を開拓し続けている。2016年2月24日に、自身自身初となる全国流通盤『IN A BEDROOM』をリリース。
 
   

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