UQiYO インタビュー | 「社会的に意味のある活動をしていると証明したい」

2015.6.9


UQiYO | 「“社会的に意味のある活動をしている” と証明したい」

生演奏とエレクトロを融合させ美しく心地よい音楽を編み出し、非日常=”浮世”にいざなう2人組音楽ユニット・UQiYO(ウキヨ)。常に新しい試みを行う姿勢と作風は、国内外で活躍するクリエイターからも注目され、様々な共作も行っている。また、ライブハウスはもちろん、映画館やコワーキングスペース、図書館、お寺などでもライブ行うなど、リアルな場でも新しい音楽体験を提供している。

 

「UQiYOの音楽性はYuqiそのもの」

——おふたりがいつ音楽活動を始めて、どのように出会ったかを教えてください。

Yuqi:音楽はピアノからなんですけど、ピアノを始めたのは小学校1年生のときです。中学2年くらいまで近所のピアノの先生に習ってて。その後、ピアノを辞めてから作曲的なことを始めました。当時、カラオケセットみたいなものが家にあったんですけど、そのカラオケセットがなかなかの優れもので。曲のヴォーカル部分を抜いて、自分でどんな曲もカラオケにして歌えたり、歌ったものをダビングできる機能があって。それを使って遊んでいたのをきっかけに、だんだん音楽自体にのめり込んでいくようになりました。それからちゃんとした録音機材を手に入れて、そういった機材の進化とともに僕もアップデートしていって、気がついたら今にいたると。

Phantao:僕は小学校にあがる前からピアノを弾きはじめて、中3くらいまで不定期で習っていました。高校に入ってからはバンドもやったりしつつ、大学ではジャズばっかりになって。就職してからも引き続きずっとジャズをやっていたんですけど、会社を辞めてからはどんな音楽もやるようになったって感じですね。

Yuqi:出会ったのがその会社なんですよね。スピーカーを作る会社でした。皆さんのよく持っているテレビや、iPhone、最近売ってないけどコンポとかに入っているスピーカーを作っている会社で、僕は設計開発、彼は製造技術をやっていました。

Phantao:製造技術というのは、要するにスピーカーを作る機械を作る人ですね。

Yuqi:一応同期なんですけど、そのころは特に仲がいいわけでもなく、話したりもしていなかったよね。

Phantao:むしろ知らなかった。存在を知ったのは多分会社入って1年~2年経ったくらいかな。

Yuqi:それで、会社の中に軽音楽部があったんですけど、そこでバンドを組んでの発表会が1年に1回くらいあったんですけど、たまたま共通の人に集められて一緒にバンドをやることになって。そこではじめて、お互いのことを認識して。演奏も上手いし、「やるなぁ」と。

——結成当時と今では、UQiYOの音楽性はどのような変遷を辿ってきましたか?

Phantao:UQiYOの音楽性はYuqiそのものなので。彼自身の進化や変化と共に、UQiYOも変わっています。

Yuqi:一緒にやってかれこれ4~5年なんですけど、そもそもPhantaoと一緒にやりたいと思った理由が、彼が持っている僕には無いジャズのエッセンスを自分の音楽に加えたいと思ったからなんです。それまで1人でコツコツ作ってきたものに、彼の音楽性が入ることで、より進化したと思います。

——そうやって作られる音楽はもちろん、UQiYOはMVのクオリティも注目されていますよね。2ndアルバム『Twilight』リリースの際は、4組のクリエイターとコラボして4曲のMV作品を公開されていましたが、これらは楽曲からイメージして映像を作っていったんですか?

Yuqi:4本すべて違うクリエイターに担当していただきました。その業界ではヤバい存在の人たちに集まっていただいて。元々そういう人たちへのコネクションなんて全然なかったんですけど、デモテープを各所に送りまくっている中でできたつながりなので、自分たちで築いた誇りに思える人間関係だと思っています。

 

ユニークな発想にもとづいて作られる楽曲

——また、UQiYOは面白い企画を多く試みていますよね。手紙をビンに入れたを入れた形式で販売していた『Twilight』収録曲の「Summer Suns」 、男の子、女の子目線の曲を交互に公開していって、バレンタインの日に曲が合わさって1曲が完成する「THY LUV」、「151A」、浮遊する歌も然りですが、音楽を届ける体験、プロジェクトをよく企画されていらっしゃいます。このような企画をするとき、音楽が出来てから届け方を考えるのか、もしくは音楽の届け方を考えてから音楽を作るのか、どちらですか?

Yuqi:今回のアルバムのほとんどの曲は、プロジェクトや企画に絡んだ曲ばかりなんです。1stの『UQiYO』は普通にアーティストがアルバムを作る過程に近くて、27~32歳ぐらいの間の5年間に、いろいろ感じることのある時期にできた自分の内面を打ち出したアルバムでした。

 
『Twilight』のときは、プロジェクトをやりたい欲求がものすごく強くなった時期で。なのでどちらかというと企画が先行していて、「こういうものがあったときに、どういう音楽が出来たらより伝わるか」とか、「ある体験をしたときに出てきた音楽が、どういう音楽だったら楽しいだろうか」ということを考えながら作った曲ばかりだったんです。ある種“セルフクライアントワーク”のような曲が集まっている作品です。


UQiYO | 「“社会的に意味のある活動をしている” と証明したい」

 
——そういう企画は、どのように思いつきますか?

Yuqi:常にネタを考えていますね。ネットでいろんな記事を読むと、音楽の分野に限らず、面白いことをやっている人はいっぱいいるし。例えば、「「151A」」こと「浮遊する歌」。これはモノとして1枚だけのCDが北海道から沖縄にたどり着いたら全国リリースをしようという企画なんですけど、今現在ぜんぜんたどり着かないんですよね。ガチで浮遊してて行方不明(笑)。この企画は、Wu-Tang Clanが1枚だけアルバムを作って、オークションに出すカタチでリリースしたことにヒントを得ました。

そういう風に、1枚しかアルバムを出さないって今のこの音楽/コンテンツ業界の中ですさまじいアンチテーゼになるなと思って。コンテンツがあまりにも手軽に扱われるている中で、あえて流通させず、データとしても流通させないんだけど、何らかの形で勝手に世の中には出すってことはやれなくもないなと思ってい。それで、日本でしかできない方法を考えた時に、日本って場所や人にもよりますけど、財布とか拾ったら交番に届けたりする美徳がまだあるじゃないですか。そういう信用できる部分もあると思ったので、人づてにひとつの作品をリレーさせて、それが全国を縦断したとしたら、そんな美しい国はないなと思って。それを実証したかったし、1枚のアルバムだけで日本に流通したとなれば、そんなロマンチックなことはないなと。思いついたときは鼻血が出るくらい興奮しましたね!「こんなにいい企画ねぇぞ!」って。

Phantao:「これはいける!」ってね。

Yuqi:こういうことを思いついてから、「151A」は作り始めたんです。いきなり渡された時にUQiYOを知らない人がほとんどだと思うので、初めて聴いてくれる人のためのことを思って、めちゃめちゃ悩んで作った曲です。「151A」は『Twilight』に収録されていませんが、『Twilight』に入っている曲は「151A」と同じような発想で作った曲が並んでいます。

 

ライブハウスにこだわらないライブ活動

——UQiYOはこれまで酒蔵やカフェなど、様々な場所でライブをされていますね。

Yuqi:もともと酒蔵だったところを改装してカフェにしたところは、ものすごい雰囲気よかったですね、あそこは。やっぱり、「木」が合うみたいなんですよね、僕らの音楽って。コンクリートよりは「木」が合うみたいで。音もすごいよくて、今までのライブの中で1位2位を争うくらい気持ち良くできましたね。場所を含めて楽器なのかな、って思いました。

 
Phantao:あと、教会もやりましたね。

Yuqi:やったね。僕たちがライブをやる場所にこだわる理由の1つに、ライブハウスへの不信感があるんですね。今の時代に、いわゆるライブハウスのようなところが、昼間にカフェ経営、みたいな違う経営主体を持ってなくて、音楽だけで経営していくこと自体が非現実的なんじゃないかなって思っていて。もちろん、様々な工夫をされているところもあることも知っていますが。

ひと昔前は、若者はみんなライブハウスに行って悪ぶって大人のマナーを学ぶ、みたいなこともあったじゃないですか。親の反対があってでも行きたい魅力があったというか。でも今はそれが薄れてきているような気がして。演奏者やミュージシャンからしても、ノルマでたくさんお客さんを集めたとしても、ライブハウスへの支払いで終わりになることも多くて。相変わらずミュージシャンへの負担は大きいし、がんばって音楽やっていこうと思ってる若いミュージシャンも諦めざるをえない。こういう悪循環が起きてるなと。

俺らもそういうところにぶち当たって、じゃあもうライブハウスっていう縛りなしにライブしようってことで、場所を限定せずに色んなとこでライブをやってるんです。別に業界を変えようとか思っているわけじゃないんですけど、実際にライブするのにも色んなアプローちがあるってことがわかったので。いろんなところでやってみたらやっぱり全然楽しいし、その場所にしかならない音が鳴るんですよね。それがすごくよくて。

ただ、一方で、たまにライブハウスでやると、爆音での音響施設の良さってのは確実に感じるですよ。そこでやりなれていない、っていうのは1つの盲点だったりとかして。だから、ライブハウスとそうじゃないロケーション、両方のバランスも考えなきゃなと。でも基本的に音楽はいろんなところでできるし、やるべきだなとは感じます。

 
——ライブハウス以外のところでライブをするとき、大変なことは?

Yuqi:このあいだやった酒蔵はもともとカフェ経営してたり、音楽のイベントもあるので何も問題無かったですね。1番大変だったのがコワーキングスペースだったかな

Phantao:あれは大変だったね。

Yuqi:コワーキングスペースでのライブツアーを去年やったんです。そういうところは当然ですが本来ライブをやるところではないので、まずは施設の方に趣旨の説明からはじめなきゃいけなくて。ちゃんとここでやる意味があるっていうストーリーを説明して、賛同・理解をいただいてはじめてライブができるという。かなりハードルが高かったですね。

Phantao:まずは企画書作りからはじめましたから。

Yuqi:作業としては、ちょっとバンドっぽくないですよね(笑)。

 

UQiYOの今後

——今まで活動を続けてこられた原動力ってなんだと思いますか?

Phantao:僕はUQiYOの活動については、ベンチャー企業に勤めているような感覚でやっているので、「なんとか事業を軌道にのせたい」という一心ですね。

Yuqi:僕の音楽や表現がコアにあってやっている活動ではありますが、思っていることはPhantaoと近いですね。一つの会社というか、自分たちの活動は社会的に意味があると考えているんで、ちゃんとそのことを証明したい気持ちでいっぱいです。

僕らは単に楽曲を作って、そのままライブをやっているわけではなく、それに付随する企画やプロジェクトも込みでやっているんで、どうしても時間がかかるんですよね。時間をかけるということは、その分ほかの仕事はできなくなるんですけど、ありがたいことに僕らの活動を支援してくれる方がすでにいっぱいいて。そういった支援者の方々から、温かい言葉をいただくんですよ。僕らもまだまだですけど、「UQiYOぐらいの規模と気概でやっているミュージシャンが、音楽を続けられなくなる社会ではいけない」って思ってくれる人たちがたくさんいるんです。そういう人たちのためにも、音楽を通して社会的に意味のあることを提供できるんだ、ということを証明したい。それが、今の原動力の1つになっています。

 


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この記事の執筆者

TuneCore Japan Official Ambassador

TuneCore Japan 公認 学生アンバサダー

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