BLACK BASS | "水"のように展開するオルタナティブな新世代アートコレクティブ

2018/10/11

取材後、「写真を撮りましょう。あ、でも全員揃ってた方がいいですか?」と言うと、BLACK BASSのみんなは、「お願いします。まぁ、特に全員揃ってなくても大丈夫なんで!」と快く撮影に応じてくれた。そこに漂っていたのは、単に"適当"ということではなく、あえて例えるなら今まさにブロックハンプトンが産み出しているような流れ、あの雰囲気だった。深淵な思考とカジュアルなスタンス、お互いの才能を認め合う裏付けがある上でのポジティブな自由さ。交錯する無邪気な笑顔とシリアスな表情。わいわいと楽しそうにクリエイティブを語る彼らからは、新しい音楽アートの予感があふれていた。
(写真 左下から時計回り:leni、KRICK、GERA、中村俊介、oTTs)
 

遊びの延長線上でスタート

 
——— はじめに自己紹介をお願いします。
 
GERA:ラッパーのGERA(ゲラ)です。
 
leni:同じくラッパーのleni(レニ)です。
 
KRICK:トラックメーカーのKRICK(ケーリック)です。
 
oTTs:ラッパーのoTTs(オッツ)です。
 
——— ここまでの4人のみなさんが、音楽をやっていると。
 
中村俊介:そうですね。で、僕がビデオディレクターの中村俊介です。
 
leni:今日はいないんですけど、他にビデオディレクター兼フォトグラファーのAkira Polenghi(アキラ・ポレンギ)とデザイナーのgent(ゲン)がいて、計7人でBLACK BASSです。
 
——— 最初は確かGERAさん、oTTsさん、KRICKさんの3人だったんですよね?
 
GERA:はい、3人が高校の同級生で。最初はラップが好きなだけで自分たちが当事者になるとは思っていなかったですね。KRICKは国外に住んでる時からトラックを作ってて。マレーシアだっけ?
 
KRICK:いや、シンガポール(笑)。その時すでに塾の先生と一緒に音楽を作ってました。でも、みんなと同じで僕も当事者になるつもりはなくやってたんですけど、そのうち興味あるどうしの三人が集まって、やってみようかっていう流れになって。
 
leni:KRICKはもともとヒップホップのビートを作ってたわけじゃないしね。
 
KRICK:特にこだわりなく、音楽が作れればなんでもって感じだったんですけど、ラップでビートを作ってくれないかって言われてやってみたら面白くて、そこからですね。
 
——— みなさんぐらい若いとSoundCloudで繋がってとかもよくありますが、そういうわけじゃないんですね?
 
GERA:ですね。その3人で遊びの延長線上で一曲作ってみたら、周りの反響も良いし自分たちも楽しかったんで、続けてみようかと。それで、2017年の1月に「MATRYOSHKA」をリリースしました。
 

 
——— それが最初の音源なんですね。その頃はもうライブもやっていた?
 
GERA:ライブはまだそんなにやってなかったです。僕はフリースタイルバトルに出てたんですけど、バトルに付随するライブに呼んでいただいたり。ライブは月に1〜2回あるかないかで。そもそも持ち曲もなかったですし。
 
——— 後から加わった、leniさん、俊介さん、Akiraさん、gentさんは、3人の周りにはいたんですか?
 
oTTs:3人で音楽を作って、それが友達や知り合いの間に広まった結果、残りの4人が反応してくれて繋がった感じです。
 
俊介:友達の友達ではあったんです。共通の友達にダンサーの女の子がいて。僕とleniは大学一年生の時に映画を作る授業が一緒で、そこで出会いました。「ENOSHIMA」のMVはleniが撮ってるんですけど、じゃあ次のMVは僕が撮ろうかって。あと、個人的に資生堂の映像を作った時に音楽を探してて、その時にまた共通の知り合いがKRICKを紹介してくれました。
 
KRICK:俊介はFLUMEが好きで、音楽的にもバイブスが合ったんで一緒にやろうかって。
 
——— では、ローカルシーンでの結びつきでもなく、友達のつながりでだんだんと集まった感じなんですね。
 
leni:そうですね。俊介なんかは京都出身で。
 
GERA:僕は川崎ですし、地元も全員違います。
 

バラバラだけど、最終的にみんなの色があってれば

 
——— みなさんは、自分たちをどういう集まりだと思ってますか?クルー?それともコレクティブ?
 
leni:コレクティブだと思ってます。例えばMigosだと三人の音楽性がすごく近い中でがっつりユニットでやってる感じだけど、僕らは音楽チームの中でもあんまりそういう感じじゃないんです。聴いている音楽もバラバラで。それに映像の俊介とかは常に一緒にやっているわけではなく、例えばRICKNOVA君とか他のアーティストの映像も撮ってるし。それぞれがバラバラにやりつつ、最終的にみんなの色があってればチームとしては面白いかなと思ってます。みんなで一つの目標に向かっていくっていう感じではないし、そういうモチベーションもないです(笑)。
 
GERA:歌詞にしてもベクトルが同じ方向を向いてて一体感があるっていうのがクルーだと思ってるんですけど、僕らは気持ちや音とかは合ってても、一つの方向に向かっているというよりは一人一人で良い作品を作ろうという感じなんです。
 
——— クリエイティブに対して、みんなが持ってる能力を結集させていると。ちなみに、B.O.A.T.というアートチームとBLACK BASSの関係というのは?
 
leni:B.O.A.T.はなくなりました(笑)。去年の夏くらいから、僕や俊介の周りにどんどん人が集ってきて、せっかくならみんなで何かやればいいんじゃないかって考えて。それで、BLACK BASS自体は三人で残したまま、B.O.A.T.っていうチームを立ち上げる構想だったんですけど、僕ら自身がB.O.A.T.とBLACK BASSの使い分けがよくわからなくなってしまって(笑)。
 
——— では、現状としてはアートコレクティブで、7人のBLACK BASSだと。
 
GERA:そうなります。
 
——— これまでシングルが6つ、あとEPで『MIZUZEME』をリリースされていますね。EPは最初『3』っていうタイトルにしようとしていたとか?
 
GERA:その時はまだ3人だったんで、『3』にしようと思ってたんですけど、他のメンバーが参加する流れになったんで、改めて『MIZUZEME』っていうなんかヤバいタイトルになりました(笑)。
 
oTTs:検索でも引っかかりやすいし、名前がBLACK BASSだから、ちょうどいいかなって。
 

 

サウンドとリリックについて

 
——— BLACK BASSという名前自体は、図鑑を適当に開いて決めたそうですね。
 
oTTs:それぞれ名前を色々考えたんですけど、結局みんなが納得するものが出てこなくて。それで、ちょうど打ち合わせ場所にあった図鑑を”せーの”で開いて決めました。僕のイメージだと、BLACK BASSの音楽って日本ぽくない感じもするんで、魚のブラックバスも海外から来てるし、「海外のものを日本に取り入れる」っていう意味でもしっくりくるかなと。
 
leni:エゴサーチめっちゃ大変だけどね、基本釣りの動画が出てくるから(笑)。
 
——— 現時点で、サウンドの方向性というのは?
 
leni:アジアのかっこいいアーティストたちと連携しながらやりたいなと思ってます。ソウルのプロデューサーともすでに色々やりとりをしてますし。音楽的にはKRICKが柱なんで、アメリカのメインストリームで流行ってるサウンドというよりはヨーロッパな感じでやっていきたいなと。ロンドンのアンダーグラウンドな感じというか。
 
——— トレンドのサウンド、例えばトラップを追うとかではなくて?
 
leni:最初はそういう感じもあったんですけど、あまり流行りに興味がなかったりするし、「こいつらなんか違うな」っていうのがいいかなと。
 
KRICK:具体的にはMURA MASAとかね。流行ってるけど、他とはちょっと違うなってアプローチの感じ。
 
——— リリックに関してはいかがでしょうか?
 
oTTs:GERAが英語のリリックをメッセージとして取り入れてるんで、僕はいかに自分なりの日本語で伝えられるかっていうのを意識してます。KRICKが作るのは日本のラップにはないようなトラックが多いから、それをどう日本語で消化するかっていうのは面白いチャレンジになっています。
 
GERA:僕は日本語と英語の組み合わせで歌詞を作るのが好きで。例えば「LOOOP」の冒頭だと、英語の中に一語だけ「梅酒」って単語を入れてるんですね。「a ship of 梅酒」で「梅酒をちょっとすすると君のこと思い出す」みたいな意味で、”梅酒”と”I miss you”をかけてて。英語と日本語だからこそできる、似た言葉を繋げて一つのセンテンスにして聴き心地も良く、歌詞をみたら意味もなるほどっていうような言葉遊びをやってます。
 
——— GERAさんはトリリンガルだと聞きましたが?
 
leni:それはガセ情報が出回ってるだけで(笑)。「LOOOP」でMOMENT JOONさんとご一緒した話につながるんですけど、「ENOSHIMA」っていう曲をMOMENT JOONさんがTwitterで良いねって言ってくれて。MOMENT JOONさんはそれこそトリリンガルで色んな言語のはざまで音楽を表現するタイプなんですけど、そこからなにかしらの流れで、GERAが多言語話せるみたいになってて。
 
GERA:いや違うんだけどみたいな(笑)。でもMOMENT JOONさんは、いつも聴いてるプレイリストに入れさせてもらってるぐらい俺らもずっと聴いてたんで、良いねって言ってくれたのをきっかけに連絡してみたら、一緒にやりませんかって話になって。それで、ビート的に「LOOOP」がMOMENT JOONさんに合いそうな感じだったので、リミックスを作りました。一応言語でいうと、僕は昔ニュージーランドに住んでたんでバイリンガルではあります。
 

 
——— GERAさんが、"MC区役所"だったというのは?
 
GERA:それは本当です(笑)。
 
leni:黒歴史だよね(笑)。
 
GERA:まだ遊びでやってた頃に、僕が”MC区役所”で、oTTsが”爆裂チョリソー”って名前で(笑)。
 
leni:「ENOSHIMA」まではその名前だったよね。それで初めて一緒に仕事した時に「さすがにそれはないと思うよって」言ったら、次の日にLINEで「じゃあoTTsってどうかな?」って送られてきて。
 
——— ちなみにoTTsの由来は?
 
oTTs:単に言葉の響きで決めました。
 
——— GERAさんはどうしてGERAに?
 
GERA:ちょっと笑っちゃうっていう。そのゲラからです。
 

個性豊かなメンバーのルーツ

 
——— みなさんの音楽的なルーツもお伺いしたいのですが、せっかくなのでBLACK BASSで作っているプレイリストを見ながら語っていただければ。
 

 
leni:このプレイリストは基本的には音楽担当の4人で作ってて。
 
KRICK:Phum Viphuritは僕ですね。タイ人なんですよ、ファンク系で。
 
leni:僕は宇多田ヒカル好きだから入れてます。
 
oTTs:僕は割と邦楽のロックも好きで、くるりとか。
 
KRICK:Silk City、GoldLink、Desiignerの「LOUD」も僕かな。
 
GERA:ここには入れてないんですけど、フランク・オーシャンはよく聴いてますね。ちなみに、映画音楽やアートも含めて南アフリカのカルチャーが好きで、来年から住むことになってるんですけど、去年1ヶ月ぐらい行ってる時に、現地でできた友達と一緒にレストランに行ったら、たまたまSOULECTIONの方と知り合いになったんです。最初全然知らずに「Spotifyに僕らの曲あります」とか言っちゃって、後でもう本当にすいませんみたいな(笑)。
 
leni:Lil SkiesとLandon Cubeの「Nowadays」やJuiceWRLDの「Black & White」とかSoundCloud系のエモいのは僕で。$uicideboy$やLilpeepとかも好きで。多分、ゴリゴリのヒップホップを一番好んで聴くのは僕だと思います。あとはOpus Innの「Grand Illusion」ですね。Opus Innは直接付き合いがあるんですが、音の作り方がすごい好きで尊敬しています。ぜひ一緒に仕事もしたいですね。
 
KRICK:「Tulips」みたいなお洒落な曲は昔から聴いてるんですけど、こういう雰囲気の曲に3人のラップが乗るとメッセージ性が出たりするんですよね。
 
leni:「HAPPYMEAL」っていう曲があるんですけど、ビートがストレンジな感じになってて、僕ら3人もよくわかんない感じでラップを乗せてるという(笑)。KRICKから「これはロックンロールです」って曲のデータが届いて、聴いたら「これロックロールなの?」って。
 
KRICK:The Policeの「Every Breath You Take」のギターリフだけをサンプリングしてるんで、それを伝えたかったんですけど言葉足らずで(笑)。
 

 
——— 楽曲に関してはKRICKさんがプロデューサーということでしょうか?
  
GERA:構成についてはラッパーの3人もリクエストしますけど、ビートメイクからエディット、マスタリング、ヴォーカル録りまでKRICKがやってます。
 
KRICK:音の部分は全て僕がやってますね。発想に関しては3人に任せてる感じで。
 
——— 映像担当ですが、俊介さんの好きな音楽は?
 
俊介:僕はもうFLUMEが好きすぎて(笑)。世界観でいうと、80’Sエレクトロニックの古いやつとか、海外ドラマの「ストレンジャー・シングス」みたいな雰囲気が好みです。
 
——— ちなみに、「LOOOP」のMVはどのようなコンセプトに基づいて制作されたんですか?
 
俊介:撮影も含め全て僕が手がけていて、ワンカットの映像になっているんです。"水の流れ"をモチーフとしていて。羽田空港の横で撮ってるんですけど、最初は歩いていて、次に自転車に乗って、車に乗った後に飛行機に繋がるっていう、人間が進化していく様みたいなのを表現しています。
 

 
——— また、今日はいませんがAkiraさんとgentさんはどんな音楽が好きなんでしょうか?
 
全員:ちょっと存じ上げません(笑)。
 
leni:Akiraはロックかな。あとは、ビルボードのチャートに入ってるようなのが好きだよね。G-Eazyとか。
 
GERA:そして、gentに関しては知らないという(笑)。
 
——— みなさんはどうやって音楽を探したり聴いたりしていますか?
 
GERA:Apple Musicには入ってるんですけど、海外のレーベルのTwitterからたどってYouTubeで見たりもするかな。
 
leni:好きなアーティストが影響を受けた音楽をさかのぼっていくことが多いですね。
 
KRICK:Spotifyのプレイリストですね。垂れ流しにして、いいなと思ったら保存したり。
 
oTTs:日本の曲も好きだから、音楽アプリよりもYouTubeで映像と一緒に聴いたりしますね。あと、良いと思った曲はメンバー内でシェアしているんです。
 
GERA:たしかに一番のdigはメンバー間の共有だよね。グループLINEで送り合ってるんですけど、基本良い曲ばかりだからコメントとかしなくても絶対みんな聴いてるし。
 

水のように、そしてオルタナティブであり続ける

 
——— お伺いすると、それぞれみなさんルーツが違う集まりだと思うんですが、ストリートだったり、フューチャリスティックだったり、コレクティブとして色んな見え方がある中で、BLACK BASSはどう自分たちを見せていきたいですか?
 
GERA:水ですね。簡単にいうと水みたいなブランディングがしたくて。水って目立たないけど常に生活の一部になってるし、ビートにもどこかしら水のようなエレメントを感じてもらえればと思います。日常のワンシーンを彩るというか、生活のBGMとして常にあるような存在でありたいです。
 
leni:攻撃的な音で人生に介入していくというより、色をつけてくみたいなイメージかな。無理にストリート感を出さなくてもいいと思っていて、それよりBLACK BASSしかないものを出していきたいし、他との勝ち負けというよりオンリーワンの存在でありたいですね。少し話は変わるかもしれないんですけど、ストリートカルチャーってそもそもオルタナティブなものじゃないですか。だから、いわゆる「ストリートっぽい」ことって商業的だと思うし、それって言ったらIKEAで大量生産されてるグラフィティアートと変わらないんで。僕らとしては、そうじゃなくてオルタナティブであり続けることが大事なのかなって思ってます。
 
——— 理想とするアーティストはいたりしますか?
 
GERA:BROCKHAMPTONはルーツの違う人が集まって、それぞれがストーリーのある別モノを作ってるっていう部分でいうと、ああいう在り方はいいなとは思いますね。
 
KRICK:まぁでも少しクサい言い方をすると、誰かを目標にしちゃうとその人の上にはいけないから、理想とかはあまり考えないようにしてて。これからも変化していくと思うんで、その変化にしっかりと対応しつつ流れは組んで筋を通してやっていくのがいいかなと思ってます。
  
——— 今後の予定を教えてください。
 
GERA:10月12日に代官山UNITの"CLIQUE"っていうイベントに出るんで、曲を聴いて気に入ったらぜひ遊びにきてください。
 
oTTs:恵比寿baticaで来年の二月初めに企画をやる予定なんですけど、アートコレクティブならではのイベントにしようと思ってます。ハコの空間作りからトータルプロデュースして、映画のような設定で、それに沿ったブッキングまでして、世界観を作り込むつもりです。空間作りがメインで、プラスそこにライブもありますみたいな。
 
leni:あと、東高円寺駅近くの杉並区和田に、木造の古いアパートを改造したスタジオ兼ギャラリーをBLACK BASSメンバーで開設予定です。とりあえず年内に改造を終わらせたくて、もしスペースのデザインについてアイデアのあるアーティストの方がいらっしゃったら連絡いただきたいですね。
 
KRICK:新しいEPを今年中にリリースできるよう進めてます。それぞれのソロもみんな制作に入っているんで楽しみにしていてください。
 
leni:僕のソロMVに関してはもう発表されます。監督は今日いないAkiraがやってくれてるんだけど、超かっこいいです。ソロとしてはBLACK BASSの第一弾かな。
 

 
GERA:俊介は?
 
俊介:仲良い友達なんですけど、OMEGA SAPIENっていう韓国から来ていま日本に住んでるラッパーがいて、その繋がりで韓国のBig Marvelっていうチャンネル登録者が550万人以上いるYouTuberのMVを撮ったんですけど、これもある意味BLACK BASSの一部の作品っていうことで、ぜひ見てみてください!
 


 

 
BLACK BASS (ブラックバス)

 

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