7つの指標から見る音楽チャートって?アーティスト・レーベル活動の指標にも。【後編】

2015/09/05

先日開催されたMusic Hack Day Tokyo 2015へ、スポンサーとしてAPI提供も行っていた複合型音楽チャート「チャートインサイト」。 これからもランキング機能を交えた新たなサービスが生まれることにワクワクしつつ、チャートディレクターである礒崎さんに「音楽チャートの気になるところ」と、「今後の音楽ランキングのあり方」についてお聞きしました!

*前編はこちら


 

Billboard Japan チャートインサイト ディレクター 磯崎さん
 
チャートインサイト
「フィジカルセールス」「デジタルセールス」「ストリーミング」「ラジオ」「ルックアップ」「Twitter」「YouTube」の7つからなる複合型のジャパン音楽チャートを提供。

 

ストリーミング再生回数のチャンネルが一気に伸びた

 
ーー「チャートインサイト」で、最も注目な指標とは? 
 
我々は各指標の相互関連を見ています。YouTubeがセールスに跳ね返るのか、Twitterのバズがセールスに跳ね返るのか。他の複数データからセールスの原因や今後の推移を我々は追うことが多いですね。
 
なので、お互いに関連しているのか、していないのかを見ていきたいなぁと思っています。そういう意味でいうと、注目の指標はやっぱり「総合順位」です。総合順位が皆さんにとって共感性が高いものになっているかどうか、がサービスの根本だと思っています。 
 
 
ーー気になる所として、ストリーミングの指標がありますが、これはどの様に計算しているのでしょうか?
 
歌詞サービス「プチリリ」さんが複数のサービスに提供する歌詞表示回数データを元に、ストリーミング数を推定しています。ストリーミングのレシオに関する係数は、基本的にはマーケット規模を考慮しています。 
 
レコード協会が発表されている有料配信の実売規模と、我々のサウンドスキャンによるフィジカルの実売規模を比較し、全体的な割合の計算方法を算出しています。詳細は秘密です(笑)。 
 
また、今回日本国内でも新たなストリーミングサービスが提供されたタイミングで、ストリーミング再生回数が一気に伸びたのも事実ですね。 
 
 
ーーやはりそうなんですね。 
 
それは新サービス以外のサービスも活性化した、とも言えます。今はそれがひと段落してきてはいますが、今後定着していくのかどうかに興味はありますね。有料無料はさておき、一気に拡大したストリーミングのユーザーの動向は気になります。
 
YouTubeはサービスを公表する前から、数値をサンプリングして来ましたが、全体的には割と落ち着いた数字なんですよね。一部150万回再生など突出している数字もあるんですけど、ある程度全体数は変わらないです。
 
とすると、YouTubeというヴィジュアルストリーミングサービスは定着したと言えますよね。 恐らく、同じ様なことがオーディオストリーミングでも起きてくるんだろうな、と考えています。 
 
 
ーー海外のSpotifyなどのストリーミングサービスが国内でサービスインした際は、直接再生回数を反映させる予定はあるのでしょうか? 
 
そうですね。USが既に反映しているので、我々も反映したいと思っています。 
 
 
ーーその他に、今後追加したいチャンネルは? 
 
アクティビティーをもっと追いたいと思っていますね。所謂「買いました」というセールスとは別に、ルックアップということでCDを購入またはレンタルして、友達と貸し借りなどしてCDをリッピングするというのは、ユーザーにとって割と直接的なアクティビティーですよね。
ここの精度を、もっと上げられないかと思っています。多様化するユーザーの音源に対するアプローチをもうちょっと細かく追えるといいですね。 

今後のランキングのあり方

 
ーー国内でのランキングのあり方について、「所有」と「接触」はお互いに影響力が大きい分、チャートへ反映する両者の比率を保つのが難しそうに思えます。ここ辺りはどのように解決しているのでしょうか? 
 
実は一番最初にラジオとフィジカルセールスを合算した際に、アメリカ側から「ラジオの比重をもっと大きくしろ」と言われたんです。理由としては、ラジオは一般に浸透しているメディアとして有効だからということだったんですが、「いくらなんでもこの比率で出していくのは無理だろう」と色々交渉しながらジャパンチャートを作ってきました。
 
つまり、アメリカにとっては「所有」よりも「接触」に比重を置くべきだ、という感覚を普通に持っていたんですね。もっと言うならば、50年以上前、1958年のアメリカのHOT100がスタートしたタイミングで、「ジュークボックス」と「シングル」「ラジオ」とありましたが、その時点で「シングル」よりも「ラジオ」つまり接触の比重が大きかったんですよ。 
 
ただ、日本の音楽マーケットの感覚から、アメリカの感覚を押し込むと変な感じになりかねないと思っていたので、日本のマーケットに合わせながら、アメリカで蓄積されたノウハウを活かして作っています。 
 
 
ーーそこは日本にローカライズされていると。 
 
そうですね。あくまで日本のマーケットに合わせて作ってきています。 
 
 
ーー今までも有りましたが、話題になった楽曲がネットでバズってチャート入りするなど、今後はより顕在化していくのでは?と思います。複合型チャートではそういう事が実際に起こりやすくなるのでしょうか? 
 
 
例えば、この特定の日に「3月9日」レミオロメンという曲がTwitterで13位になっています。これはやはり卒業または桜のシーズンでこの曲をつぶやくユーザーの方が多かったんですよ。これはメディアでの発信を受けてではなく、ユーザーから自然にボトムアップされたことなんですね。
 
昔の曲をユーザーは忘れていなかった。そこがきっちり拾えて、セールスやラジオに広がっていくということは、この曲にとってすごく幸せなことなんでしょう。そういう曲がどんどん増えてチャートに反映させていければいいなと思いますね。 
 
 
ーー音楽チャートについて色々お伺いさせて頂きましたが、今後目指す音楽チャートの未来とはどのようなものでしょうか。 
 
複合チャートがヒット曲を明確に表すと我々は考えています。複合チャートの考え方自体は、日本に定着しているとはまだ言えないので、それがどんどん根付いていくことによって、ユーザーの方々には色々な指標から、色々な楽曲に出会って貰えたらいいかなと思います。
 
また、レコード会社やアーティストが、そのアーティストパワーをジャッジする際に、今までだとセールスやライブ動員数などで見ていたと思うのですが、こういった形で複数のデータがあると、もうちょっと気長にやっていけばチャンスがあるかもしれない、となるかもしれない。
 
私がディレクターだったら、セールスがなくとも「YouTubeで見られている」「ルックアップで聴かれている」などと言うのは絶対アーティストにとってプラスになると思うんですね(笑)。 
そういう使い方をしていただきたいなと思います。 
 
 
Billboard Japan 
米国で最も権威のある音楽チャート・Billboardビルボード)の日本公式サイト。洋楽チャート、邦楽チャート、音楽ニュース、プレゼント情報などを提供。
Web : CHART insight
 

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