【スマホ時代の音楽マーケティング】世界的な人気ゲームアプリとタイアップ!多国籍ユニット『Mili』【後編】

2015/07/31
by Takashi Watanabe

【スマホ時代の音楽マーケティング】世界的な人気ゲームアプリとタイアップ!多国籍ユニット『Mili』とは?
 
台湾のゲーム企業『Rayark』社が運営する、世界的に人気なスマートフォン向け音楽ゲームアプリ『Cytus』『Deemo』。両ゲームへの楽曲提供を通して、一躍話題になった音楽ユニット。
 
昨年リリースされた1st Album『Mag Mell』は、9/29付オリコンインディーズ週間ランキング 1位、台湾のiTunes Store総合ランキング1位、日本のiTunes Store総合ランキング10位を獲得。
 
YouTubeチャンネル登録者数は約4万人を集め、結成から約3年足らずで、日本だけでなく、世界中にファンを抱えるアーティストへと上り詰めています。
 
激変する音楽業界における、新しいマーケティング手法にスポットライトを当てる本連載『スマホ時代の音楽マーティング』。第1回は『Mili』コンポーザーを務める『Yamato Kasai』さんへのインタビューです。
 
インターネット上で結成された多国籍ユニットであること、制作・プロモーション・ライブ活動まですべて自分たちの手で行う真意、そしてどういった経緯で『Cytus』『Deemo』への楽曲提供は決まったのか。。。
 
神秘のベールに包まれていた『Mili』への貴重な初インタビュー後編です。前編はコチラ
 

 
ーー両ゲームへ提供した楽曲たちは、提供直後から人気を獲得したのでしょうか?それとも、両ゲームの人気が過熱していくと共に、徐々に火がついていったイメージでしょうか?『楽曲がヒットしてる!』という実感が生まれるまでの期間や、その過程を伺わせてください。
 
そうですね。やはり『Cytus』『Deemo』の影響は、かなりありました。そこから『Mili』という名前が1人歩きするようになり、ゲーム以外からもファンになってくださった方もたくさん増えてきて。元々ゲームに提供するための音楽ユニットではないので、しっかり楽曲が評価されているという実感に繋がり、とても嬉しかったです。
 
楽曲がヒットしてる実感というのは、『Deemo』が発売された当時Youtubeの再生数が爆発的に伸びたことですね。再生数・チャンネル登録ともにものすごく増えて。正直、驚きました。。。
 
 
ーー両ゲームで使用された楽曲共に、ゲーム内で楽曲を購入できるという仕組みがある。それにも関わらず、両ゲーム使用楽曲を収録した『Mili - Mag Mell』は、iTunes Storeで爆発的なヒットを記録しています。ゲーム内での使用を飛び越えて、配信ストアでのセールスにも結びついた要因は、どこにあったとお考えでしょうか?
 
まず、ゲーム内の楽曲はゲーム用に編集されていますし、フルコーラス版ではありませんからね。
 
『Deemo』が発売され『Mili』というアーティストを、国内外問わず気に入ってもらえた。純粋に音楽として求めてくださっているファンの方々に届けるべくアルバムを制作した。結果として、それが受け入れてもらえた。そういう自然なことなんだと思います。
 
<"Mag Mell" Trailer Movie - Mili>
 
『Deemo』に提供する際、まず第一に考えたことは、『音ゲーの曲』という意識や概念を捨てることから始めました。『Mili』はアーティストであり、作家ではありません。だからこそ音ゲーだけど『こんな曲あり?』『普通ならこんな曲ダメだよね』というのルールを、良い意味で無視しました。
 
あくまでも個性的なアーティストであり続ける。ゲームへの楽曲提供であっても、それは譲らない。そういった姿勢が、『Mili』という名前をファンに覚えてもらうことや、アルバムのセールスにも繋がったと思います。またRayarkとは、そういった音楽制作・スタンスを共有できる信頼関係があった、というのも大きかったです。
 
 
ーーRayark社ではなく『Mili』名義で楽曲配信(原盤権をアーティスト自身が持つというスタンス)を行っているのは、意図したものでしょうか?
 
原盤権に関しては、Rayarkとの契約は『楽曲の貸与』です。Rayarkも自由に使えるし、当然こちらも自由に使えるようになっています。
 
 
ーーなるほど。そういった経緯で、楽曲配信を行う際に我々TUNECORE JAPANがお役に立つことが出来たんですね。日本国内におけるタイアップ楽曲で、アーティスト自身が原盤を保有しながら販売を行うケースはあまり目にしたことがなく、非常に新鮮でした。TUNECORE JAPANを知ったきっかけは何だったのでしょうか?また実際に使ってみた感想がありましたら教えて下さい。
 
確かに、日本国内においてアーティストが原盤を保有しつつ、大きなタイアップを獲得する事はまず無いと思います。僕らの場合、元々はいわゆる業界の認識するタイアップとして行ったわけではありません。Rayarkが好きで、Rayarkとそこに提供する別のアーティストさんと一緒にゲームを作っただけの事であり、結果的にタイアップと捉えられる事が起きただけです。
 
当時は大きな広告媒体を利用したわけでもなく、結果として大きな広告媒体となったのが正しいです。何かを1から、楽しいと思えて、かつ良いものを作りたかっただけですね。アーティストとしての作家活動をしていれば、割とあり得ることなのかもしれません。
 
失礼な話ですが、TUNECORE JAPANさんのことはデジタルディストリビューションを行う際、他の業者さんと色々比較させて頂いた上で、僕らの今後の可能性と、僕らがインディーズ活動であり、個人として利用させていただく事への容易さ、いろんな面で比較させていただいた際、困難な決定ではありました。
 
実際に利用してからはサポートを頂いたり、レポートが細かく確認できたりと助かっています。僕らは国内外のシェアの調査で、販売に限らず、全てのレポートを細かく確認していますので、そのあたりがとても良かったです。
 
 
ーー『Cytus』『Deemo』は、台湾でも熱狂的ファンが多いゲームだと伺っています。そうした背景を受け、やはり『Mili』ファンの方々も、台湾をはじめとしたアジア圏の方々が多いのでしょうか? 日本人ファンと海外ファンの比率がありましたら、教えて頂けますでしょうか。
 
アジア圏のファンは、とても多いですね。最も多い台湾に続いて、中国・韓国。日本と台湾のファン比率は、大体同じくらいです。全体として見ると、台湾に続いてファンが多いのはアメリカになります。最近は西洋文化圏にもじわじわと『Mili』が広がっているような感覚です。ですので、日本人ファンよりも日本を除いた世界各国のファンの方が圧倒的に多くなっています。※現在『Mili』YouTubeチャンネル登録者数は、約4万人
 
 
ーー少しプロモーション面の話を伺いたいのですが、『Mili』としてアーティスト活動を行う中で、主に対外向けのプロモーションとして活用していたのは、 YouTubeだったのでしょうか? 他にも力を注いでいるプロモーションメディアがありましたら、ぜひ教えて下さい。
 
メインはYoutubeですね。『Mili』を立ち上げる際、最初から世界に行くと決めてました。それに伴って海外のSNSや動画サイトのシェアを調べていった結果、やっぱりYoutubeとFacebookが必須なんですよね。国内向けの対策としては、Twitterも重要視していますけども。
 
Rayarkとのやり取りをきっかけに色々と考え、世界中のユーザーを対象にするならば、そこで気に入ってくれた人たちが情報を得られる場所を『Mili』として提供する必要があった。だからこそ、メジャーなSNSは一通り準備してあります。
 
誰がどこで情報を得るか、それをこちらが一箇所に指定するよりも、幾つか提示して自由に選んでもらうというスタンスを重視しました。SNS1つにしても、国を隔てた途端、用途やシーンが異なりますからね。
 
 
ーー今後はどういった活動を行っていく予定でしょうか。今回のようなゲームアプリへの楽曲提供は今後も続けていく、日本はもちろんだが海外市場をメインで狙っていく等々、これからのプランがありましたらお聞かせください。
 
今後もゲームアプリへの楽曲提供は続けていきます。まだ公開することは出来ませんが、すでにいくつか予定もあります。海外市場へも、もちろん展開していく予定です。結成当時から、その気持ちは変わりません。『Mili』として、更に独特なアーティストとなるべく特殊な動き、面白い試みに挑戦していきたいです。
 
 
ーー今回の『Mili』さんの成功事例から勇気づけられるアーティスト、あらたなマーケティング手法を学ぶ音楽人も多いかと思います。最後に、他インディーズ・アーティスト、音楽人へのアドバイスや応援メッセージをお願いします。
 
 
成功事例と言われますと、少し考え物ですが。。。(笑)
 
新しい手法を求めたのではなくて、今求められている動きを行ったまでという気持ちはあります。芸術・ネット音楽・音楽配信・CD・人との繋がり・色んな物の『今』を考えて『これから』を提示したいと思っています。
 
様々なジャンルの新しいシーンがすごくたくさん、凄まじい勢いで増えています。そして、それだけ情報量が多くなっていて、それだけ迷っているようにも見えます。同時に、様々なシーンに実際に触れなければ、気付けないことも沢山あります。
 
アドバイスというと偉そうですが、迷わないことがアーティストとして大事にすることだと思います。結果的にそれがブランディングとなり、唯一無二の物となると思います。
 
今の世の中なんでもありです、貫き通せば、すべてスタンダードと成り得ます。音楽を、芸術を盛り上げていきましょう。
 

 

Mili
様々な音楽的経緯を経て結成された音楽制作ユニット。2012年、Yamato Kasai(Composer,Arranger)とカナダ在住のカナダ人ボーカリストmomocashew(Vocal,Composer)によって結成。
 
台湾のゲーム企業『Rayark』が手がける人気音楽ゲームアプリ『Cytus』『Deemo』への楽曲提供によって、一躍話題に。両ゲームへの収録楽曲を含んだ1st Album『Mag Mell』は、2014年9/29付オリコンインディーズ週間ランキング 1位、iTunes Store台湾総合ランキング1位を獲得している。
 
音楽制作、アートワーク、プロモーション、ライブ活動、それらすべてを自らの手で行っている。世界各国に熱狂的なファンが多い、稀有な存在のアーティストである。
 
 

 

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